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2017.11.21

快適な住環境と資産価値を守る!「長期修繕計画」って何?

中長期のスパンで住まいを見据えて快適・長持ち!

マンションに居住されている方や、オーナーとして所有されている方ならば、「長期修繕計画」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。しかし存在は知っていても、なぜ必要で、どう作成されているのか、いまいちよく理解できていないという方もあるかもしれません。そこで今回は「長期修繕計画」にスポットをあて、その意義や知っておきたいポイントなどについて解説していきましょう。

どんなに素晴らしい計画で作りあげたものも、完成してから時間が経過すれば、それとともに痛みが発生することは避けられません。日々生活し、使用する住まい空間ももちろん例外ではなく、すべての建物で住み始めれば経年劣化が生じ、性能も低下していってしまいます。

近年のマンションは、高い品質と性能をもって頑丈に設計されている物件、さまざまな付加価値となる工夫が施されている物件が増えていますが、そうした価値を維持するためには、適切なメンテナンスが不可欠です。

あらゆる物と同様、建物にも一定の寿命はありますが、大切な住まいですから、できる限りその寿命を延ばし、新築当初の機能を失わせることなく、快適な居住環境と資産価値を維持させていきたいですね。そのために中長期的な視野から、適時適切な修繕工事を実施していけるよう、あらかじめ予定表として策定しておくのが「長期修繕計画」なのです。

痛みが目立ってきたら、また何らかの不具合が生じたら、その都度その部分を補修、修繕するという方法でも、最低限の対処をとることは可能です。しかしそれは建物にとって最善の方法とはいえず、あくまで使うための応急処置で対応しているにすぎません。

部位や材料によって異なる寿命から、手を入れるべきタイミングが予測できるならば、深刻な痛みとなる前に修繕を行うことで、より長く快適に住める空間として、また新築時に劣らぬ価値をもつものとして、効率よく保全を図れるようになります。マンションのような一定以上の規模をもち、複数の人々・世帯が生活する建物であればなお、修繕に高い計画性が必要であり、共同で価値を維持・向上させていく考えを取り入れることが大切です。

何をどう定める?おさえておくべきポイントは?

「長期修繕計画」では、20年、30年といった先を見据えて、いつ頃、何を、どのように、いくらくらいの予算で修繕するか、適切なメンテナンスの周期や項目を定めておきます。物件の種類や立地環境など、個々に条件が異なりますから、適切なタイミングや工事の種別もさまざまとなりますが、作成者によってあまりに考え方が異なったり、含むべき内容がもれていたりするままにはならないよう、2008年に国土交通省が「長期修繕計画標準様式」を定めて公開しました。

標準的な「推定修繕工事項目」も具体的に示され、「長期修繕計画作成ガイドライン」とともに提供されていることから、現在はこれをベースに作成することが基本となっています。

修繕や改修を行う際には、当然ですがまとまった費用が必要になります。これには、一般に入居者から毎月徴収されている修繕積立金を資金として充てるようになっていますが、この積立の根拠を明確にするという意味でも「長期修繕計画」は重要な役割を果たします。

積立の方式では、将来的な引き上げ額の幅を少なくし、過剰な入居者への負担とならないようにしながら円滑な運用を実現させる観点から、均等積立方式が望ましいとされていますが、場合によっては、他に段階増額方式や一時金徴収方式が採られることもあります。

大規模な修繕を行う場合、急に始めることはできませんから、およそ1~2年前から着手することになります。そうした場合、マンションの管理組合役員の任期は多くが1年ですから、準備から実施でメンバーが替わり、情報がうまく伝達されないということもあり得ます。しかし、「長期修繕計画」がしっかりと作成され、その予定を関係者みなが同意している状態が確保されていれば、混乱を防ぎ、スムーズに工事への準備、実施、アフターとプロセスを進めやすくなります。

単純な修繕だけでなく、資産としての価値向上や性能改善にかかる改修を含む場合もありますから、計画はあらかじめ居住者の要望を反映させ、どのような暮らしを望むのか、その実現に必要な建物や設備はどのようであるべきかについて検討し、共通理解のもとにある、マンションの将来ビジョンとしておくことが望ましいですね。

また、計画は一度作成すれば完璧というものではありませんから、5年といった一定期間が経過した時点で、定期的に見直しを行うことが大切です。これによって現実との乖離がない内容で関係者がそれぞれ了解・承認し、運用していくことで、大きな意義・効果を発揮するものとなるでしょう。

このように「長期修繕計画」は、中長期的な視野に立ち、定期的に必要な修繕・改修を円滑に行っていくために不可欠なものであり、それによって資産であるマンションの寿命を長くするほか、快適な居住環境と価値、性能の維持確保、改善を実現するために策定されるのです。この意義を理解し、有効に活用したいですね。

(画像は写真素材 足成より)