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2017.11.17

これからの常識!住宅履歴情報を活用しよう

大切な住まいの履歴書、住宅履歴を知る

人生において最も大きな買い物となることも多い住まいは、誰にとってもとても大切な資産です。理想の住宅を手に入れたら、長く大事に使いたい、手放すことになってもできるだけ価値のある状態で譲りたい、そう考えるのは当然ですね。

そうした長く住み継げる住まいのため、中古住宅としての活用を促進させるため、「住宅履歴情報」という仕組みが整備され、注目を集めるようになっています。今回はこの「住宅履歴情報」とはどういうものなのか、そのメリットや活用方法などをあわせて解説しましょう。

住宅履歴情報は、「住宅履歴書」や「住まいの履歴書」などとも呼ばれ、その住宅の設計に関する情報から施工、維持管理、権利関係や資産に関する情報などまで、そのプロフィールを総合的にまとめたもので、いつ・誰が・どのように新築や修繕、改修・リフォームなどを行ってきたのかを記録したもののことをいいます。まさに住宅の“履歴書”にあたるものですね。

2009年に「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行され、長寿命な住宅の認定制度がスタート、耐震性や省エネルギー性、劣化対策などの条件を満たし、「長期優良住宅」の認定を受けた住宅では、この住宅履歴情報の作成と蓄積、保存が義務づけられてもいます。

よって長期優良住宅の認定を受けたり、建築を予定したりされている場合は、間違いなく作成しなければなりませんが、それ以外の住宅を所有されている方でも、住宅履歴情報は活用価値のあるものであり、作成・保存するメリットがあるものとなりますから、ぜひここでその仕組みを知っておきましょう。

作成・活用にはどんなメリットがあるの?

住宅は建ててしまえば終わりというものではありません。快適な状態を保ち、長持ちさせるためには、建築時に品質の高い丈夫な住宅とするだけでなく、点検や修繕などの維持管理を適切に行っていくことがとても重要です。

日本の住宅は優れた点が多いにもかかわらず、建ててから壊されるまでの年数が欧米に比べて非常に短い傾向にあり、まだ使える住まいが次々と建て替えられています。こうした使い捨てのような住み方は、環境に与える負荷が大きいことはもちろん、住む者にとっても長期的にみた居住費負担が重くなることとつながっていますから、賢く住み継げる、永く快適に住める価値ある住宅が流通していく社会への転換が必要でしょう。

この仕組みを支えるのが「住宅履歴情報」なのです。新築時の設計図面や構造計算書といった書類、写真など、十分な資料があれば計画的な維持管理が容易になります。実施した修繕・リフォーム情報も蓄積されますから、その後の維持管理も適切なタイミングで、効率よく行えるようになるのです。

実際にリフォームを行う際も、住宅履歴情報からの現況と希望をすり合わせることで、調査や設計施工段階における手戻りやかかり増しがなくなり、最適な予算と工期で合理的なプランの立案と施工が可能となりますから、無駄な費用をかけることなく快適に住めるようになるでしょう。

いつ発生するか分からない災害時にも住宅履歴情報は力を発揮します。蓄積された資料をもとに、スムーズな復旧、補修を行いやすく、住宅設備機器などに不具合が生じた場合の交換なども、残された部品情報、業者情報から間違いなく迅速に遂行されるため、安心・安全で、いち早く日常を取り戻すことができると考えられています。

そしてこれらに加え、最も活用レベルが高いものとして、住宅を売買する際の交渉で有利に働くというメリットが挙げられます。設計、施工や維持管理など住まいのプロフィールを記したものがある住宅は、購入検討者にとって大きな安心ポイントとなり、魅力的に映るでしょう。しっかりとしたメンテナンスを行ってきた住宅は、その価値を反映した価格評価を受けられるため、売主となる所有者にとっては資産価値の保全、納得のいく売却の実現につながりやすくなります。

中古住宅の流通促進において、見た目には美しくともその機能性や劣化状況など見えない部分に不安があること、情報の不足や不透明性が大きな心理的ハードルとなってきたことを考えると、この住宅履歴情報の存在は、十分な情報の量と透明性を確保するものとなってそうした問題を解消し、安心・納得の円滑な取引と、事後のトラブル発生防止に寄与することでしょう。

中古住宅で取得した後も、住宅履歴情報を引き継ぎ、その後の維持管理計画に役立てながら蓄積、情報補完を行っていけば、安心で快適な住まい環境と住宅の価値を維持できます。

住宅履歴情報を作成し、蓄積・活用することは、少し面倒なことに思われるかもしれませんが、このように多くのメリットを生むことであり、住まいの質や機能、資産性を維持して、豊かな住生活を実現するものとなります。ぜひあなたも作成・活用してみてください。

(画像は写真素材 足成より)