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2018.2.26

魅力にみえる“保証”は本当に頼れるのか?賃貸経営のホント

賃貸経営を始めるなら知っておきたい“保証”の仕組み

現物を対象とした不動産投資で資産形成を図る場合、個人投資家ならば多くのケースが土地活用の手段として、マンションやアパート、戸建の賃貸経営を検討するでしょう。賃貸経営を行えば、土地と建物の資産をもとに、毎月の家賃収入を得ることができるようになります。

流動性が低く、まとまった投資で中長期の保有が基本となる不動産投資において、賃貸経営を組み合わせることで得られる家賃収入という安定した収入源は非常に重要なものであり、投資事業活動全体の成否を握るポイントにもなるでしょう。そこで今回はこの賃貸経営で知っておきたい「保証」について、解説します。

いうまでもなく、賃貸経営最大のリスクは入居者が決まらず、空室が発生して、当初想定した家賃収入が得られなくなることでしょう。このリスクに対応するものとして、しばしば「家賃保証」という仕組みが出てきます。語感から何となく、家賃が確実に入るように保証してくれるのかな?と期待を抱きがちですが、そう単純なものでもありません。

まずこのオーナー向けの家賃保証には、大別して2つの種類があります。1つは「空室保証」で、もう1つは一括借上げとも呼ばれる「サブリース」です。これらは似て非なるものですから、それぞれを詳しくみていくこととしましょう。

空室保証とは何か?

空室保証とは、一般社団法人全国賃貸経営補償機構が提供する制度で、毎月固定の掛金を保証料として支払うことにより、賃貸経営で発生した空室分の家賃における一定額を補塡、収入がゼロになるリスクを回避する保険のようなものです。

賃貸管理や入居募集といった部分は、オーナー本人もしくは委託する管理会社が行い、機構の代理店を通じてオーナーが補償に関する契約を締結、一定額の家賃収入が確保されるようにします。物件の状況や掛金などで選べる複数のコースがあり、例えば90%補償コースを選択すると、毎月5%の掛金負担で、家賃の90%がオーナーの最大収入率になります。

機構は毎月物件の入居状況確認を行い家賃収入率を計算、全体の家賃収入率が保証率に満たない場合、その差額分を「給付金」として翌月末に支払い、マイナスを補塡します。得られる収入は満室を想定するとやや目減りしますが、最大90%で固定された収入を確保できる安心は、利用におけるメリットでしょう。

管理会社の利用やリフォームの実施、家賃の見直しなど運営にかかる細かな縛りがなく、一定の条件を満たせば柔軟に利用できる点もポイントです。毎月支払う掛金は賃貸経営上の経費として計上できるので、税制面のメリットもあります。

なお保証条件や契約期間、必要な諸費用は物件によって異なる場合もあり、それぞれ利用に際して審査がありますから、その点は留意してください。

よく聞くサブリース(一括借上げ)とは?

こうした空室保証より、家賃保証としてよく知られているのはむしろ「サブリース」の方でしょう。オーナー向けサービスとして大手不動産会社やハウスメーカーが提供している仕組みで、空室が発生しても一定割合の家賃がオーナーに支払われる点では同じですが、契約内容には大きな違いがあり、近年はトラブルも増加しているなど、注意すべき点もあります。

サブリースとは、業者がオーナーから物件を一括で借上げ、入居希望者に転貸しすることをベースとした家賃保証の制度です。通常の賃貸経営ならばオーナーが入居者と賃貸借契約を結びますが、サブリースの場合、オーナーが結ぶのは業者とのサブリース契約のみで、個々の入居者との契約は業者が結ぶことになります。

オーナーは入居者募集や契約・更新だけでなく、家賃の集金、滞納催促、クレーム処理、物件の設備修繕など諸管理まですべて任せることができるため、手間をかけることなく運用が行えます。加えて物件の全室を業者が一手に借上げる契約となっていますから、たとえ入居者が見つからず空室となっても、入ってくる家賃収入が減ることはありません。この手軽さと空室リスクのなさがサブリースのメリットです。

しかしもちろんメリットばかりではありません。まず保証される家賃収入は8~9割で、敷金・礼金や更新料などそれ以外の収入は保証する業者側の取り分となるため、どうしても収益性が落ちてしまいます。

また管理とセットになっているため、家賃の設定をはじめとした運用における判断をオーナーが自由に行えなくなるというデメリットがあります。業者は物件の老朽化や競合物件の登場など条件を加味し、空室発生をできるだけ避けるように動きますから、家賃をあらかじめ相場より低く設定したり、賃料改定による値下げを繰り返したりします。

こうなるとオーナーに支払われる額もそれに伴って低減しますから、さらに想定した収入より低い額しか得られなくなってしまうのです。この可能性を加味せずローンの返済計画を組んでしまうと大きな損害を被る危険があります。

また、免責期間が設けられていることにも注意が必要です。入居者が退去した後など、新たな入居者が決まり、家賃が入り始めるにはある程度期間が空くと考えられます。そのため、一定期間はオーナーにも賃料支払いを行わなくてよいという条件が付けられているのです。

通常2~3カ月程度ですが、入れ替わりが頻繁にある場合、この免責期間による家賃収入の喪失も非常に大きなものとなる可能性があるでしょう。

修繕についてもサブリース業者が施工業者を決定し、計画を決めてくるかたちになるため、オーナーにとっては運用の自由がききません。収益性が落ちたと判断し売却を希望しても、20年や30年といった長期一括借上げの契約になっていることが多いことから、その間は売却もできないというケースもしばしばです。また長期の契約として、業者の経営不振や倒産リスクも考えておかねばなりません。

このようにサブリースの場合、実質的に管理・運用の権限を手間とともにすべて業者へ渡し、オーナーは収益の一定配分を受けるという仕組みになりますから、利用する場合は契約内容を子細にチェックしておくことが重要です。

サブリース契約を解約する際の条件はどうか、免責期間は長すぎないか、家賃の最低保証金額設定はどうなっているか、建物の建築にかかる契約や修繕工事の義務、運営諸費用の負担などの設定はどうかなどを中心に、疑問点を残さないよう精査しましょう。

いかがでしたか。不動産投資の賃貸経営における空室リスクは避けられないものであり、それにどう対処していくかは重要なポイントとなります。自身の投資スタイル、運用方針に合わせ、保証の仕組みも賢く利用するようにしてください。

(画像は写真素材 足成より)