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2018.2.15

まずはこれだけ!初心者必読の不動産投資と賃貸経営

基本を理解して始める不動産投資と賃貸経営

円建てのみで資産を保有しておくことの将来リスクや、現状の預金利息が記録的低水準にあることを受けた資産形成の効率性といった観点から、投資を検討する方が増えてきました。世にはさまざまな金融商品がありますが、中長期的視野に立ちながら、一定の資産性を確保して、中庸から低めのリスク・リターンによる堅実な投資を望むなら、不動産投資は候補リストの上位に挙がるでしょう。

ただ一口に不動産投資といっても、マンションやビル、住宅に直接投資する現物の不動産投資から、REITなどの証券化不動産投資もあります。証券化不動産投資は、日々価格が変動するもので、基本的に投資家個人が運営をコントロールすることができません。一方、現物の不動産投資では、自ら物件を購入し運用・判断していく、賃貸経営とセットで考えていくスタイルが基本になります。そこで今回は現物の不動産投資の話として、賃貸経営におけるポイントや基礎知識などをチェックしていきます。

はじめに不動産投資と賃貸経営の関係を少し整理しておくと、不動産投資の場合、元手となる資金を投入し、運用を経て資産をできる限り増やすことが最大の目的であり、投資用物件を購入して売却利益を狙っていく、市場の価値変動における差分を利益とするキャピタルゲインの取得が目標になります。

よって、前提として物件価格が値上がりしてくれなければなりません。しかし国内ではバブル崩壊後、十分なキャピタルゲインが得られる物件価格の上昇は訪れず、初心者がこれのみで資産形成を図り、投資家として生き残っていくのは非常に難しい状況にあるといえます。

一方賃貸経営は、資産価値をもつ不動産を得て、人に貸し出すことからインカムゲインとなる家賃収入を継続的に得ていくものです。銀行の融資を使って拡大させることもでき、節税対策と土地の有効活用をメインに、投資というよりも安定的な運用、事業活動として進めていくことが可能です。

あわせて好機が訪れたときには売却判断を下し、キャピタルゲインも取れる可能性がある、キャッシュフローをハイブリッドな手法で最大化していける、これが現物不動産投資のポイントであり、投資と賃貸経営の関係なのです。

賃貸経営のメリット・デメリット

賃貸経営で不動産投資家が行うべき内容は、建物や部屋など物件の厳選と取得、入居者募集と賃貸借契約、物件および入居者の管理、退去時の処理と原状回復、再募集に確定申告や決算作業です。

仕組みはごく単純であり、最も重要なのは物件の選定作業になるでしょう。あとは管理会社に委託できることがほとんどを占めますので、経営者としてのコントロールや判断を行うだけです。申告や決算は規模にもよりますが、専門家・税理士に任せる方がよいかもしれません。もちろん自分で税務などを学び、処理すれば、コストを抑えることができます。その場合も初めのうちは不明点などが多いと予想されますから、相談できる専門家や窓口を調べ、確保しておきましょう。

賃貸経営には、多くのメリットがあります。まず、物件を得ることで確実な資産を得て、賃貸料という安定した収入源を保有することができる点が挙げられるでしょう。短期的な価格変動に左右されない、決まった額の家賃は、入居者があれば放っておいて入ってくる定期安定収入です。年金代わりやその足しにしていくこともできます。

またインフレーションに強いというメリットもあります。物価が上がれば現金価値は下がっていきますが、家賃は通常、物価上昇とともに上がっていき、物件価格も上昇します。現金による貯蓄よりも、強く安定的な資産運用・形成になり得るのです。

不動産取得にかかった額を、耐用年数に合わせて少しずつ経費に計上していく減価償却の仕組みで、節税を図ることもできます。相続税対策としても有用で、現金はそのまま課税評価されますが、不動産の場合、土地は路線価評価、建物は固定資産税評価額で算定し、賃貸ししている場合はさらに一定額の減額措置が適用されるため、節税になるケースが多いのです。

またローンを利用する際に、団体信用生命保険に加入しておくことで、万が一のとき遺族への保証も確保されます。死亡時に残債があっても、遺族には引き継がれず、資産のみ残すことが可能です。

賃貸経営での不動産投資は、銀行融資が受けやすいこともメリットです。一般的なビジネスと異なり、長期でまとまった額をはじめから借り入れやすく、不動産の価格が値下がりしても、返済が滞っていなければ融資が止められたり、一括返済を求められたりすることもありません。

では逆にデメリットにはどのようなものがあるでしょうか。まず第1に空室リスクがあります。入居者が決まらなければ家賃も入ってきません。周囲に新築物件が生じ、家賃を下げなければならなくなるリスクもあるでしょう。こうした空室リスクや家賃下落リスクは、はじめから考慮に入れ収支計画を立てていくことが重要です。この点でも物件選びが後を左右するため重要であることはいうまでもありません。

第2に建物が老朽化していくリスクがあります。どんなに素晴らしい建物でも、新築のままの価値と機能性をずっと維持することはできません。必ず定期的なメンテナンスが必要となり、修繕コストがかかってきます。このコストを考えた維持・管理は、賃貸経営の非常に重要な鍵であり、管理会社とともによく検討する必要があります。場合によってはコストと売却価額を比較し、売却を決断することも考えに入れます。

一方で計画的に修繕積立を行い、効率よく付加価値を生む手入れを行っていけば、空室リスクへの対策とともに資産性を維持する老朽化対策も可能となります。大いに工夫が問われる点と覚えておいてください。

売却の値上がりが狙えるならば、同時に値下がりのリスクももちろんあります。しかし長期にわたって保有し、家賃収入をもとに借入をなくせば問題はないでしょう。より怖いのは金利上昇のリスクです。繰り上げ返済をするか、固定期間を長くするなどして対応することになりますが、金利が上昇すると返済計画に狂いが生じるため、大きなリスクになり得ます。融資知識と無理のない計画で運営していかねばなりません。

このほか、災害リスクや不良入居者の発生などのリスクも考えられますが、保険の利用や審査の厳格化、保証会社の利用などで対処可能です。管理会社もうまく使いましょう。

賃貸経営で失敗しないために

このように賃貸経営について、その仕組みやメリット・デメリットをみてきましたが、失敗する主因はまず空室リスクや修繕コストなどを見込んでいない、自然に家賃収入だけが入ると期待した甘い収支計画によるものが大半を占めます。あくまで経営、あくまでビジネスであり、何もしなくても儲かるわけはありません。十分な計画性をもち、中長期的な視野で経営手腕を発揮しましょう。

また物件選定が甘く、表面利回りの高さだけで購入する、実際の物件を確認することなく土地勘のない場所の物件購入を決めてしまうといったケースも失敗を招く典型です。利回りが高い物件は、ハイリスク・ハイリターンの投資になることを理解し、むしろ慎重に検討しましょう。想定の収益率ではなく、実際に手元に残る収入、資産をトータルで増やすことを目指さなければなりません。

個々の特性が価値に大きく影響する不動産では、周辺環境のチェックもきわめて重要です。資料だけでは分からない情報も、直接足を運んで入手するなど、工夫しましょう。

最後に、赤字でも節税に役立つからと賃貸経営を勧められるケースがありますが、これも資産運用の失敗につながりやすい事例です。確かに、損益通算の仕組みで税金を取り戻せますが、赤字経営を続ければ手元に現金は残らず、金融機関からの信用度も低下していきます。

手元に現金が残らないことで、ローン金利の上昇リスクや突発的に生じた修繕コストなどに対応できなくなれば、資金繰りに困ってしまうでしょう。あくまでも節税は付随するメリットであり、主目的にしてはいけません。

いかがですか。不動産投資と賃貸経営について、理解しておきたいことをまとめてきました。どんな投資にもリスクはつきものですから、よくその対象を理解し、賢く計画を立ててください。

(画像は写真素材 足成より)