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2018.2.27

相続税対策で考える不動産投資、新たな資産形成のポイント!

投資が目的でない不動産投資?

2015年1月より実施された税制改正で相続税における基礎控除額が縮小され、実質的に大幅な増税となったことから、相続税における節税が強く意識されるようになっています。これまで自分には関係ないと考えられていた方も、可能な相続税対策にはどのようなものがあるのか、どう資産を守り育てていけばよいのか、悩まれるようになっているかもしれません。

一方で、昨今の非常に低い預金金利などから、投資による積極的な資産形成への熱が高まり、不動産投資が再ブームとなっています。この不動産投資、実は相続税対策としても有効で、投資目的からではなく、税制面の理由から行動を起こす人も増えてきているのです。そこで今回は不動産投資がなぜ相続税対策になるのか、その仕組みとポイントを解説しましょう。

財産を不動産にして課税評価額を減らす

相続とは、ある人が亡くなった際にその遺された財産を被相続人にあたる人へ引き継ぐことをいいます。相続税は相続を受けた全員にかかるものではなく、一定の控除や調整を行った上で、それ以上の財産を引き継いだ人が納めることになる税です。

相続税を計算する際に対象となる財産は、現金や預貯金、株や投資信託、国債などの有価証券、生命保険金などはもちろん、家財や自動車などの動産、土地や建物などの不動産も含まれます。

言うまでもなく現金の価値はそのままの額で動かしようがありません。有価証券など流動性の高い財産についても、評価時点の株価や為替レートなど相場に基づき、スムーズな時価総額での評価がなされます。

不動産についても評価の考え方は同じなのですが、他の財産とは異なり、流動性の低さや個別特殊性の高さ、価値を一元的に価格で評価して示す機関や取引所がないことなどから、時価ではなく、特殊な評価基準を導入して評価することになっているのです。ここが大きなポイントで、この基準の違いから、不動産で持つことにより財産の評価額を小さくできる、その結果、相続税額を抑えられるというのが、基本の考え方になります。

不動産の評価額をもっと詳しく!

不動産の課税評価についてより詳しくみていきましょう。まず土地は、一般に市街地ならば路線価方式で、それ以外は倍率方式で評価します。路線価方式では、土地が面する道路の路線価を基準に面積で算出、形状によって一定の補正を行って評価します。およそ地価公示価格の80%程度になるでしょう。

倍率方式は路線価が定められていない土地の場合に用いるもので、該当する土地の固定資産税評価額へ種別ごとの一定倍率をかけて評価します。この方法の場合、地価公示価格の70%程度となります。

次に建物ですが、こちらは固定資産税の評価額がそのまま反映されます。建築費用に比較すると50~60%程度になるでしょう。路線価2,000万円の土地に3,000万円の建物を建てたならば、相続税での評価額は、2,000×0.8+3,000×0.5=3,300万円と見込まれます。5,000万円との差額、1,700万円分が圧縮できました。

また不動産を投資用不動産として第三者に賃貸ししていれば、建物の評価額でさらに30%の控除を受けられます。土地も「貸家建付地評価」として評価額を20%程度下げられることから、上記の例が1,600×0.8+1,500×0.7=2,330万円程度になり、5,000万円からは2,670万円分の節税になる可能性が出てきます。

このほか、事業用の宅地で400平米、貸付事業用宅地で200平米、特定居住用宅地で330平米など、敷地の種類に応じた限度面積にあたる分は、小規模宅地の特例で土地の相続税評価額がさらに減額される仕組みもあり、これらの組み合わせで、不動産による相続ならば、現金より相続税を軽減できると考えられるのです。

検討する際の注意点は?

このように相続税で大きな節税効果が見込める不動産投資ですが、もちろん注意点もあります。まず不動産として所有することにより、固定資産税や都市計画税の負担が発生します。とくに更地では多額の固定資産税が継続的にかかりますから、うまく有効活用を図らねばなりません。

そのため多くの場合賃貸経営を行うこととなりますが、賃貸経営には空室リスクが伴います。空室リスクをなくすサブリースの仕組みなどもありますが、サブリースには別のリスクが存在し、やはり一定のリスクを負って管理することを考えなければなりません。管理にかかる手間や委託する際のコスト、ローンを組んで取得するならば、その金利リスクも考える必要があるでしょう。

もちろんせっかく取得しても、その不動産の価値が大幅に下落してしまっては元も子もありません。節税を意識するあまり、資産性の低い物件を購入してしまい、運用でも赤字が続く、売却しても売却可能額がきわめて低いなど、トータルでみた時、相続税の節税効果を帳消しにしたり、それを上回る損失を出したりするケースもあります。

資金計画に余裕はあるか、収益性や長期的な運用の面からみても合理的な判断といえる投資か、十分に検討を重ねた上で行動するようにしましょう。相続予定者とよく相談しておくことも大切です。不動産とうまく付き合っていく計画を立て、相続税における節税効果も十分に発揮させる、こうして全体での資産形成・承継の最大化を図ることが成功の秘訣です。

(画像は写真素材 足成より)