住宅ファイル制度>住宅ファイル制度コラム>オープンエンド型ファンドとは?概要から課題まで知っておきたい基礎知識
2018.2.10

オープンエンド型ファンドとは?概要から課題まで知っておきたい基礎知識

不動産投資を始めるならまず違いをしっかり学ぶべし!

マイナス金利の影響からきわめて低い預金金利が続いていることもあり、資産運用に投資を考える人も増えています。不動産ファンドや不動産投資信託、不動産証券化商品、J-REITなど不動産関連の商品を目にする機会も多くなっているでしょう。不動産投資を始めるなら、まずその種類と特徴、違いを理解することが重要です。

そこで今回はまず、ファンドの分類にかかる基礎として、オープンエンド型ファンドを取り上げます。どのようなものなのか概要を理解するとともに、現状と課題をみていきましょう。

オープンエンド型とは、投資証券の追加発行や払い戻しが常に行われるタイプ、つまりいつでも資金の換金ができるタイプの投資信託やファンドのことをいいます。投資家は、必要に応じ販売会社などを通じて、一部または全部の換金を求めることができ、発行者はその要求に従って、1口あたりの純資産額による換金に応じなければなりません。

ただし、ケースによっては一定の期間は解約が行えないクローズド期間を設定していることもあります。その場合、該当する期間内は原則換金が行えません。

オープンエンド型に対するものとなるクローズドエンド型は、投資家の求めによる投資証券の払い戻しをそもそも行わないものであり、満期まで換金できないタイプのことを指しています。ファンドマネージャーにとっては、運用資金の変動がないため、運用に集中できるメリットがありますが、払い戻しに応じてくれませんから、投資家は解約を希望する場合、自ら買い手を探し、投下した資金の回収を行う必要があります。

このとき、ETFやREITなど証券取引所に上場しているものならば、市場価格での売買が可能です。ただし、市場価格はニーズによって変動しますから、純資産額と一致するとは限りません。よって実際の資産価値より高く売れる場合もあれば、安い評価しか受けられない場合もあるのです。

このように考えると、常に純資産額をもととした換金がなされるオープンエンド型は、投資家にとってより安心度が高いように思われます。しかし常に換金可能な状態とすることは、資金の急激な減少も発生しうるということであって、それによりファンドマネージャーが当初想定したような運用は行えなくなり、基準価額の下落を招いてしまうリスクも抱えることになるのです。こうしたそれぞれの特色とリスクが、オープンエンドとクローズドエンドには違いとしてあります。

日本の不動産オープンエンド型ファンドにおける現状と課題

かつて日本で不動産金融商品としてあるのは、クローズドエンド型のみで、オープンエンド型はありませんでした。国内初の非上場不動産オープンエンド型ファンドとして私募REITの運用がスタートしたのは、2010年11月のことです。日本では歴史が浅いものの、米国やイギリス、ドイツでは古くからオープンエンド型ファンドも不動産金融商品として認知されており、広く一般にも浸透しています。

日本では大手不動産会社系列の運用会社が先行するかたちでスタートし、投資銀行系や総合商社系も参入、徐々にプレーヤーは多様化してきました。クローズドエンド型においてかけられる高いレバレッジのリファイナンスリスクや解約できない流動性のリスクなど、不動産関連以外のリスクを抑えられる点が特徴で、主にリスクは不動産の空室率や賃料変動といったところにあります。よって、基本的にはリスクをできるだけ低く抑え、長期の安定したリターンを不動産投資市場から得たい人に向くものとなっているのです。

とはいえ、すでに市場が成熟している欧米などに比べると、国内ファンドのレバレッジ水準はやや高めとなっており、日本では借入金利が低い水準にあることから、パフォーマンス確保の観点でやむを得ない面もあるものの、より投資選択肢の幅を広げ、特色を出していくためには、改善も期待されます。

不動産は元来、短期間での売買に適さないものであり、他の外貨や株式、債券のように換金性・流動性が高くありません。そうしたものを投資対象としつつも、常にある投資家からの払い戻し請求に応じながら、ファンドを安定的に運用していく必要のあるオープンエンド型ファンドでは、設計・運営におけるさまざまな工夫が高度に求められます。

欧米のファンドがさまざまな歴史的危機を乗り越えてきたのに対し、日本のオープンエンド型ファンドは金融危機後に誕生した商品ですから、まだ景気後退期など目立った危機を経験していません。今後景気後退の局面に変化したタイミングなど、投資家による解約・払い戻し請求が大規模に集中した際、どのような対応ができるのかは未知数で、これが長期的な市場の発展を左右するとも考えられます。

徐々に拡大してきているオープンエンド型ファンド市場ですが、今後はそうした進化と対応、先行する海外の商品や制度を参考にした、投資家の保護と柔軟な商品の誕生促進に寄与する環境の整備や法制度がより望まれるでしょう。

投資を検討する側としても、知識を深めて選択肢を広く確保していくほか、市場や商品内容に対する要望などを通じ、広く市場の発展を支えていけるとよいですね。

(画像は写真素材 足成より)