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2018.2.7

不動産投資と税金のホント

不動産投資で節税になるって本当?

近年、預金金利の低さから投資に関心を持ち始める人も多く、将来の資産形成に向け、積極的な運用に踏み出す機運が徐々に高まってきました。そうした中で“不動産投資は節税になる”という言葉から、数ある投資商品のうち不動産投資を選択するケースが増えています。

少子高齢化の影響などで、身近な消費税はもちろん、所得税に住民税、相続税と、さまざまな名目で負担が増加していく一方に感じられる代表的なものが税金ですから、“節税”というワードが分かりやすく魅力的に見えるのは無理もありません。

確かに不動産投資では節税効果が発揮されます。しかし、ただ投資するだけで毎年納税額が抑えられる、多くの還付が受けられるというものではありません。やみくもに飛びつけば、かえって負担を増やし、不動産投資で大きな失敗をすることになりかねないのです。裏を返せば、不動産投資で成功するには税金の知識が不可欠ということもいえます。どうすれば本当に不動産投資を節税へと導けるのか、税金とうまく付き合うにはどうすればよいのか、少しずつ学んでいきましょう。

節税のポイントは赤字、所得税を考える

はじめに原則を述べておくと、不動産投資が節税になるのは投資によって赤字を出すからです。確定申告では、収入について黒字となった場合、それに見合う税金を納める必要が生じます。しかし会社員で源泉徴収を受けており、すでに所得税が引かれている場合で、不動産投資が赤字となった場合、所得税を一部取り戻すことができます。

これは給料収入と不動産収入とを合算して税金を納めるからで、後者が赤字ならば余分に税金を払っていることになるからです。個人における所得税に対する節税効果と呼ばれるものは、この赤字分取り戻しになります。

しかし、そもそも資産形成を図る投資で赤字を出すのを目的化するのは納得がいかないでしょう。ここでポイントになるのが、実際の現金支出を伴わない出費、帳簿上のマイナスです。不動産のような高額で長期にわたって利用できる資産を購入した場合、その費用をいったん資産とした後、耐用年数に応じた数年にわたり、少しずつ経費として配分、計上していく減価償却という仕組みが適用できます。

不動産取得にかかるまとまった金額を、利用可能な期間に費用として振り分けられるので、実際に購入した後の複数年において、帳簿上の赤字を維持しながら実際には収入を得ているという状態を作り出すことも可能となっているのです。

一方、法人ならばどうでしょうか。個人でも法人を設立すると不動産投資の節税になるということもしばしばいわれます。しかし、必ずしもメリットが得られるわけではなく、法人化した方がよい目安は、給料と不動産による収入の合計が1,300万円を超えているかどうかです。

1,300万円を超えていれば、個人の所得税率が法人の法人税を上回りますから、法人として不動産を所有し、運用していることにすると、7~17%程度節税できるようになります。

相続税対策では?

次に相続税ですが、個人の場合、現金を不動産資産とすると、相続時に路線価から導かれた評価額をもとに、小規模宅地の特例から居住用の場合80%のマイナス、投資用ならば50%のマイナスで計算されるようになります。現金で相続する場合に比べ、2~5割の課税計算となりますから、まとまった節税効果が期待できるでしょう。

さらに法人の場合、上記のような評価額の圧縮による効果だけでなく、家族を役員としていれば収入の分散で節税を図ったり、設立したばかりの株式価格が低い、贈与税もほぼかからないタイミングで相続人へと譲渡としたりしておけば、節税メリットが得られると考えられます。

ハードルは高いがチェックしたい消費税還付

また法人となる場合、建物にかかる消費税を還付申告することで取り戻すことができる方法もあります。平成22年と平成28年の法改正により、かなりハードルが高いものとなりましたが、新規法人による消費税還付申告は今も一部で行われています。

条件として、不動産引き渡し年度に課税事業者となること、建物引き渡し時に一時的に課税売上割合が100%となるようにすること、引き渡しから3年後にかかる還付金返納の規制を回避することが必要です。

課税売上割合とは、総売上高(収入)に占める課税売上割合のことで、礼金や居住用家賃、預金利息などを引いたテナント賃貸収入や駐車場賃貸収入などの課税売上率を指します。還付年度には申告時に課税事業者選択届出書を提出して課税売上を出し、引き渡し月の家賃収入を排除して課税売上のみとなる状況を作ります。その後、引き渡し年度から2年以内に家賃収入と同等以上の課税売上が立てられれば、通算で課税売上割合が50%超となり、消費税還付の返納対象から外れることになります。

条件の整った新しい法人で、しっかりと準備を行い、書類が揃っていなければならないため、税理士に相談するといったことも必要になる可能性が高いと考えられますが、方法として存在することは知っておいてもよいでしょう。

増える負担、無理な節税は失敗の元

不動産投資ではこうした節税効果が期待できますが、投資を始めることで増える税負担もあります。不動産取得時には、印紙税や登録免許税、不動産取得税がかかりますし、売却時にもやはり印紙税、登録免許税、売却益が出れば譲渡所得税がかかります。保有している間も固定資産税や都市計画税の負担が必要になります。これらを節税することはできません。

節税のためだけに不動産投資を勧める営業がしばしばありますが、はじめに原則として掲げたように、税金が還付されるということは赤字で損失が出ていることとイコールです。利益の出る不動産を購入すれば、税金もその分だけ発生します。

利益を発生させないよう、リフォームを行うなどして経費を増やし、税金を抑制することも勧められますが、これではやはり手元にお金は残りません。購入時の出費と保有による税金負担分をいつまでも回収できなくなってしまいます。

そうした中で空室による収入源喪失のリスクと、経年による資産性の低下が進めば、明らかに投資として失敗になるでしょう。節税効果もいつまでも続くものではありません。長期的に、やはり不動産そのものが運用利益を生み出せるようでなければ失敗します。

無理な節税を図って多額の融資を受ければ、融資対策が悪化し、次の不動産購入時にスムーズな融資が受けられないということも十分に起こり得ます。

ただ不動産投資を始めれば節税になるのではなく、不動産投資を賢く行う上で、節税が行える仕組みを知ること、税金の知識をつけて運用の利益をうまく確保することが重要なのです。なお税金関係の制度は頻繁に見直しも行われますから、最新の情報を入手するように努めてください。難しそうと距離を置かず、ひとつひとつ知識を吸収していくことが成功への一歩です。

(画像は写真素材 足成より)