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2018.2.1

不動産投資にありがちな失敗とは?教訓に学ぶ!

増える不動産投資ニーズ、成功したいなら失敗例に学ぼう

近年、銀行金利は記録的な低さを続けており、「貯蓄から投資・資産形成へ」という動きも徐々に本格化、長く貯蓄偏重型を続けてきた日本でも、預金のみに頼らない積極的な資産運用を考え始める方が増えています。そうした中で、資産性が高く価格の流動性が株式など他の金融商品よりも低いことから、手堅い投資として不動産投資へのニーズも高まってきました。

そうした人気を背景に、広告はもちろん書籍やWebメディアにも、不動産投資で華々しい成功を遂げた例が数多く紹介されています。しかし、やはりより学ぶべきはその影にある失敗例であり、それを踏まえたリスクの回避策ではないでしょうか。そこで今回は不動産投資で陥りがちな失敗例について取り上げ、どこにその原因があるのか考えていきます。

知識不足へのつけこみ、甘い話にはまず注意

まず最も単純で多い失敗例は、営業の話にのって投資用物件を購入してしまうケースです。自宅に不動産関連の営業電話がかかってきたり、インターネット上やメールで広告を目にしたりしたことはありませんか。こうした業者は、資産形成に、税金対策に、生命保険代わりにといった謳い文句で、投資への参加を促してきます。

医者や弁護士、一定以上の社会的ステータスをもった企業に勤めるサラリーマン、経済的余裕のある高齢夫婦などがとくに狙われやすく、不動産投資に高い興味があったわけではないけれど、ふとしたきっかけで魅力を感じ、言われるがまま十分な知識もなく決断してしまうのです。

こうしたケースでは、とくに新築区分マンションの投資が多く、例えば以下のような事例が典型的です。地方主要都市の駅から徒歩6分、2,300万円の物件で、購入時諸費用は200万円、家賃収入として月々10万円が見込めるとします。諸費用と物件費の一部である500万円は頭金で支払い、残りの2,000万円を借入、修繕積立金と管理委託費、月額の返済分を毎月支払っていくとして、キャッシュフローでは数千円マイナスになる計算です。

キャッシュフローがマイナスならば、やめようと思うかもしれませんが、減価償却費で大幅な節税になり、確定申告によって数十万円が還ってくるからプラスになる、めったに出ない資産価値も高い場所の物件で、今購入しておかなければこうしたチャンスはそうそうないなどと、業者は早期の決断を迫ってきます。

確かに、月に1度の外食費程度の出費だけで優れた物件が手に入り、返済が終われば資産は残って家賃収入も満額望める、返済期間中も税制メリットがある、団信保険を付ければ万が一のことがあっても借金は残らないとなれば、よい話のように思えてくるでしょう。

しかし、実際はそううまくはいきません。まず資産となったことで固定資産税や都市計画税などの負担が増加、必ず入居者があるとは限らず、新築時には埋まっても数年後には空室が発生しやすくなり、家賃収入が減少します。入居者募集のため広告料負担を求められたり、魅力アップや入替時の修繕費用を求められたりと一時追加負担が増え、損失がかさんでいくのです。一方、節税の効果は当初発揮されても、将来にわたって続くものではなく、数年でほぼなくなってしまいます。

諦めて売却を決断しても、その際には抵当権を外す必要があり、借入金の残余分を一括返済しなければならず、売却額を高く設定せざるを得ませんが、新築区分マンションの場合、物件価格の下落が激しいため、およそ残りの債務より査定額に基づいた売却可能額の方が低くなりやすく、保有し続けても手放しても損失を被るという事態に追い込まれてしまいます。複数の物件を保有・運用していれば、それだけ損失の幅も大きくなり、深刻な失敗となるでしょう。

事前の下調べを十分に行わない不動産投資、とくに広告費やプレミアムがのった新築価格での物件購入による運用開始はリスクが大きいことを覚えておいてください。近年は「自己資金0円で始める不動産投資」など、ノンバンク系金融機関を用いたオーバーローンによる自己資金の持ち出しなしという仕組みを付ける業者もみられています。この場合、月々の金利が高く、返済負担が過重となって信用情報にも影響を与えかねないなど、さらにローン面の問題も重なってきます。手軽さや目先のメリットで安易に決断せず、十分余裕のある資金計画と運用戦略をもって始めることが大切です。

完全お任せ・サブリース契約の穴

1例目では、家賃収入が望めなくなってしまうことも失敗の一因でしたが、これに対応したサブリース契約にも注意が必要です。サブリース契約は、一括借り上げともいわれるタイプの契約で、不動産業者がオーナーから物件を借り上げ、入居者に転貸しするものです。オーナーには空室でもサブリース賃料が業者から支払われるため、空室リスクをなくすことができます。

直接入居者に貸した場合に比べると、手数料などを引かれますから、受け取る額は減少しますが、知識やノウハウがなくても、手間をかけなくても、全て業者に任せておけばよく、手軽に安定したマンション経営を行えるというメリットがあります。

これならば失敗はなさそうに思えますが、ここにも穴が存在します。サブリース契約の場合、運用を完全に業者へ任せているため、一定期間が経過したら家賃の減額を一方的に決定してきたり、メンテナンス費用が必要になったと請求してきたりすることが一般的なのです。

勧誘時には、こうした家賃減額が避けられないことなど将来のリスクが十分に説明されず、相続税対策にマンションをと建設を勧めるばかりというケースが多く、これにより大きな損失を被った失敗が多数報告されています。

一括借り上げはその期間の運営を業者に丸投げし、生じた出費は自らが負担しなければならなくなるものであること、賃料収入がゼロになることはないものの減少することは避けられないことを理解しておかねばなりません。運用を始めようとする地に十分な賃貸需要が将来にわたって見込めるかなど、しっかり確認しておくことが大切です。

高利回り物件での失敗

新築区分マンションは避け、しっかりキャッシュフローを考えて高利回り物件を選んだらどうでしょうか。地方に安価で投資表面利回りの高い物件がある、今なら買いだと判断して購入したとしましょう。

しかし利回りの高さはリスクの高さに比例することが一般的であり、その他の投資と同じく、高リスク高リターンの世界なのです。地方の場合、将来の人口減少が著しく、資産性の低下と家賃の下落が響き、維持コストと税金の負担が過大になってくることがあります。

遠方の訪れたこともない土地の物件で、利回りのみをチェックした選び方をしていると、周辺環境に問題があったり、豪雪地帯などで思わぬ設備費用・維持費用の負担が生じるものであったりすることもあります。実際の物件を自分の目で確認し、利回りだけでなくさまざまな角度から評価できるよう、多方面からの情報収集を図って総合的に判断するようにしましょう。

いかがでしたか。とくに不動産投資を始めるにあたって注意したい3つの失敗例からポイントをみてきましたが、最後に1点追加するなら、契約・取引時の手続きにおける失敗です。契約時には、これから投資対象とする物件の重要事項説明がありますが、この内容をよく理解しないまま契約すると、後に大きな問題となってしまいがちです。

重要事項説明には、その後の不動産投資の成否を左右する可能性が高い物件の特徴や注意点など、重要な内容が詰まっています。不動産専門用語も多くなっていますので、不明点・疑問点があれば、その都度説明を求め、納得して進めるようにしましょう。

不動産投資に限られたことではありませんが、やはりまずはしっかりと学ぶことが重要であり、リスクを理解して余裕のある資金計画のもと、慎重に進めることが何より大切です。甘い話に惑わされず、堅実に検討しましょう。

(画像は写真素材 足成より)