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2017.12.14

不動産売買で知っておきたいポイント解説・物件調査って?

不動産業者が行う物件調査って何?どんな意味がある?

不動産売買で非常に重要なのが、購入を検討している物件に関する情報をいかに収集し比較検討材料とするか、のちのトラブルにつながらないよう正しく意味を理解して進められるかどうかです。

不動産にはひとつとして同じものがありません。そして高額の買い物、多くの場合、一生の買い物にもなるものですから、ほぼやり直しが利かない状態で、最善の結果を出さなければならないという特別な難しさがあります。不動産の専門家でもない一般の消費者が、この難しさを乗り越えていくのは大変なことでしょう。

そこで一般に分かりにくい部分、目に見えない事情や状況まで、住機能に関わる必要情報を網羅的に明らかとし、十分な情報の透明性を確保するため、不動産会社による「物件調査」を行う仕組みがあります。今回はこの「物件調査」について解説します。なおこの調査は、売主の方にとっても、物件の適正価格を知り、安全な取引を行っていくために不可欠なものですから、ぜひその内容に関する知識を身につけておいてください。

まず、多くの場合、一般消費者が不動産物件について知る入口となるのは、サイトやチラシなど広告に書かれた物件概要や販売図面の情報と考えられます。ここには確かに“概要”は記されていますが、詳しい情報は書き切れていません。現地に足を運んで自分の目で確認しても、一見綺麗で問題がないように見える中古住宅で、構造上の問題や雨漏り、白蟻被害など見えない欠陥があるかもしれません。

図面や概要には書かれていない建築条件や権利関係の問題があったり、水道インフラが整備されていても配管口径が住宅と現在の生活に対して十分でなく、水圧が極端に低かったりといった問題がある可能性もあります。

こうした情報は、購入を検討する上で、明らかにされていなければ納得のいく取引とはならないでしょう。リスクが完全にゼロということはあり得ませんが、きちんと情報を得た上で、許容できるものか、価格と見合っているかを考えなければなりませんし、その権利と機会が与えられてしかるべきです。この契約前における十分な情報提供と権利保護のため、設けられているのが「物件調査」なのです。

不動産会社には、宅建業法第35条により、この物件調査に基づいた情報を、買主となる人に対し、「重要事項説明」として開示することが義務づけられています。

物件調査って具体的に何をするの?

では、不動産会社は、物件調査として具体的にどのようなことを行うのでしょう。調査は次の5つに大別できます。公簿などによる調査、面接聞き取り調査、現地調査、生活関連施設の調査、法令上の制限に関する調査です。

まず公簿などによる調査として、法務局に赴き、不動産登記事項証明書(登記簿謄本)や商業登記事項証明書、後見登記の登記事項証明書など関連する帳簿を確認して、該当不動産物件の所有者情報や権利関係などをチェックします。公図や測量図を入手することもできるため、これによる現況調査も行います。

所有者は誰か、売主と登記名義人は同一化、抵当額はどうか、境界はきちんと確定しているか、差し押さえなどは発生していないかなど、確認すべきことが多数あります。接する道路について、その所有者をチェックしておくこともポイントですね。法務局以外では、所有者である売主の許可を得て、市区町村が発行する不動産評価証明書の確認も行います。

面接聞き取り調査では、売主に直接会い、不動産の概要やこれまでの経緯についてヒアリングを進めます。事件事故などはなかったか、近隣トラブルなど人間関係はどうか、地下室や浄化槽、隣地の給排水管など見えない埋設物について尋ねるほか、土地の履歴や歪み・破損、修繕・管理状況など、所有者として認知している内容を確認します。当事者しか知り得ない情報を引き出して報告書へと反映させ、契約後のトラブルを防ぐよう努めるのです。

権利関係書類や固定資産税・納税通知書など税金関連の書類、上下水道の利用に関する明細書などの書類、測量図、間取り図といった所有者である売主が保管している書類の確認も行います。

現地調査では、実際に物件をみて敷地の形状や境界、接道幅員、建物の劣化状況、管理状態や近隣の住環境、ライフラインなどをチェックします。これまでに得られた書類やヒアリングからの情報と違う点はないかを中心に確認し、説明にあたっての疑問点をなくしておくことが重要とされています。

生活関連施設の調査は、聞き取り調査や現地調査などにも含まれていますが、さらに上下水道局で埋設管図面を確認したり、ガス会社への問い合わせなどでガス配管図の調査を行ったりと、基礎インフラの再確認を行って、情報に間違いがないようにします。

法令上の制限に関する調査としては、該当不動産のある地域の役所で、都市計画や建築基準に関すること、道路、区画整理、埋蔵文化財、森林法や景観法などについて調べ、どのような建築制限がかかっているか、再建築を行う際にハードルとなり得ることはないかなど、確認を行うことになります。

この他にも物件によってさまざまな調査を行い、取引を行うにあたって十分な情報の共有・確認が可能となるよう努めます。宅建取引に関わる不動産会社にとって、この物件調査はもっとも重要な業務のひとつでもあり、丁寧に行うことが求められています。

売主は適正な売買のためにこれに協力する必要があり、購入検討者はその意義を知って、分からない点があれば積極的に質問するなど、結果として報告された情報を十分に活かすことが大切です。おおよそで確認して契約を急いでしまった、難しくて何となく聞き流したといったことは、事後の大きなトラブルと損失・リスクにつながります。納得のいく取引のため、その大切さを理解しておきましょう。

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