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2017.12.10

中古住宅の流通市場活性化へ!鍵を握る住宅ファイル制度

進まぬ中古住宅の利活用、問題点と現状は

住宅ファイル制度は、近畿圏の宅地建物取引業協会・不動産鑑定士協会などが中心となって進めている取り組みによるもので、中古住宅の統一的な調査報告スキームを策定、情報の充実化や透明性向上を図りながら、買主側の不安を軽減して円滑な取引の成立と実行を促すことを目的としています。

今回は、社会的問題への対処としても急務とされる中古住宅の流通促進と、この住宅ファイル制度の関連性について、この制度が果たすであろう役割などを中心に考えていくこととしましょう。

これまで日本では、木造の戸建住宅が築20年程度でほぼ価値のないものと扱われるようになるなど、中古住宅に対する評価が非常に低く、また画一的である傾向がありました。これは現代の技術によるリフォームなどが適切になされても、変わらないままだともいわれています。

また不動産という特殊なジャンルであること、専門家でない消費者がやりとりをする上での限界もあることなどから、売主と買主の間における情報の偏りや不足も生じやすく、その一方で動く金額はまとまったものとなるため、結果的に事後トラブルが起きやすいイメージや透明性の低い市場といった印象が、実際以上に広がってしまっている状況があります。

こうした傾向から、日本国内の中古住宅の取引は限定的で、住宅市場全体の13%程度と、およそ6割以上を占めるとされる欧米などに比べて活発でない状態が続いてきました。米国などは中古住宅の流通が9割近くとされますから、その差は歴然です。

そうした中、社会の少子高齢化はまったなしに進行し、人口の減少も加速しています。住宅の一時取得層である30~40代の人口は、かつてに比べてかなり小規模となっており、社会経済としても変化対応が求められています。高齢化やライフスタイルの多様化などからは、ライフステージにあった住み替えニーズが新たに生じており、これに応えることも必要です。近年、放置されて数々の問題を地域環境に引き起こすところとなっている空き家への対処も、該当する空き家住宅がますます増大する予測であることから、一層の強力かつ早急な取り組みとして進められねばなりません。

住宅の建築関連技術は進歩し、中古であっても優良な品質の住宅が増加していること、既存の築年数が経過した住宅もリフォームやリノベーションなど適切なメンテナンスと改良を施すことで、高い価値をもつものとなり、住機能としても優れた物件になることをあわせて考えれば、中古住宅が今以上に活用され、積極的に流通するものとなるのが望ましことはいうまでもありません。使い捨てのように住宅を扱い、新築を建てては壊すことを繰り返さないことで、環境を保護することにもつながります。

このように社会構造の変化や技術進展によってもたらされた変化と、現状にある社会的課題を鑑みれば、日本における中古住宅流通の市場はより拡大されるべきと考えられ、活用が進んでいる欧米に比べて立ち遅れた仕組みの整備、意識改革が急務といえるのです。こうした背景から、アベノミクス政策のひとつにも加えられ、国土交通省による取り組み推進を受けて、住宅ファイル制度も注目される動きとなりました。

住宅ファイル制度が果たす役割

中古住宅の流通促進が訴えられても、なかなか日本国内で広がりをみせない背景には、買主側の事情として、住宅の品質や機能面、これまでの維持管理状態がみえにくく、価格に見合うものか判断しにくい、安全・安心に住まえるか不安を抱きやすいことが第一に挙げられます。

これに対し住宅ファイル制度は、宅地建物取引士による建物診断を実施した上での十分な品質説明と報告で応じます。住宅ファイル制度の報告書がない場合でも、購入時に重要事項説明書での説明はなされますが、ここでの説明は最低限の重要不可欠なものに限られており、充実した情報提供がクリアになされているかというとそうではありません。住宅ファイル制度を用いることで、不動産のプロによる客観的な調査を経て判明した、目に見えない部分の劣化状況や設備機能品質を知ることができるようになるのです。

また、建物診断や白蟻検査の報告書をもとに、その住宅がもつ価値、経済的な耐用年数を判定、やはり第三者的立場の不動産鑑定士が、専門家として適正価格にして示す仕組みがついていることも大きなポイントです。丁寧に使われ、メンテナンスが施された価値のある住宅については、築年数を経過していてもしっかりと価格に反映して評価されますから、買主がコストパフォーマンスを考える重要な検討材料になることはもちろん、売主にとっても買いたたかれない、不当に低い価格で取引されない環境となり、両者が納得した取引をスムーズに進めやすくなるでしょう。これは流通促進に大いに寄与すると考えられます。

さらに買主側には、購入時、住宅ローンがつかないかもしれないという資金調達面の不安もしばしばあります。これに対しても住宅ファイル制度は有効で、第三者による建物診断を受けていること、適正価格の目安が明らかになっていることから、担保評価がしやすくなりローンも利用しやすくなるのです。

オプションとしての負担が必要になりますが、住宅ファイル制度には瑕疵保険をプラスすることもでき、この保険によって引き渡し後に判明した重大な住機能の欠陥にも備えれば、さらに安心して購入しやすくなります。追加の費用発生だけでなく、心配されるトラブルも未然に回避できるメリットは大きいでしょう。

このように、主として買主を中心に、安心して購入しやすくなる仕組みがプロの手によって支えられるのが住宅ファイル制度であり、これまでの中古住宅流通を妨げていた要因をうまくカバーするものとなっているのです。売主にとっても納得のいく適正価格が見えることで、売却を積極的に考えやすくなりますから、供給も増加するでしょう。

住宅ファイル制度がうまく機能し、住宅購入時の選択肢が増えて消費が多様に拡大すれば、経済も活性化し、地域創生にも寄与、国全体の成長を支えるもとにもなります。こうして現代における諸問題の解決とより豊かな社会の実現、地域および国の成長・発展と密接に関連する中古住宅の流通促進は、住宅ファイル制度によって刺激され、実現へと向かうことが期待されるのです。

(画像は写真素材 足成より)