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2017.12.10

購入すれば終わり?中古住宅で考えておくべき維持費

一戸建てにも必要な維持管理費、賢く確保を

賃貸住宅から一戸建ての住宅を購入すると、毎月支払っていた修繕積立金や管理費、共益費などの負担から解放され、住まいが楽に確保できるようになった気分になりがちですが、実際にはその住宅におけるすべての維持管理を自分で行わなければならなくなったということであり、それに必要な資金は自ら計画して確保していかねばなりません。

中古住宅の場合、新築住宅と比べて本体の購入価格は安価に抑えられますが、築年数が経過しているものであることから、永く快適に住まい、価値を維持していくためには、より綿密な維持管理・修繕計画が必要となります。そこで今回は、中古住宅の維持費について考えていきましょう。

念願のマイホームを手に入れた喜びから、あとは住宅ローンの支払いだけ!と考えてしまう人も少なくありません。しかし、新築住宅でも中古住宅でも、その後の維持費負担は続きます。ローンを組む際には、この負担を含めた返済計画としておく必要があるでしょう。戸建住宅の維持費は大別すると、税金と修繕費用の2つです。

住宅を維持・所有すると、固定資産税と都市計画税がかかります。土地については、公示地価のおよそ70%が評価額となり、それを基準に税額が算出され、建物についてもその価値を評価した上でその評価額から税額が決まります。住宅の規模や居住地域で負担する税額は大きく異なりますが、標準的な戸建住宅で20万円程度が見込まれます。

住宅にあった修繕計画を立てよう!

税金は目安として、さらにしっかりとした計画を立てておきたいのが修繕費用です。適切な時期に、適切な費用をかけてメンテナンスを行うことが重要です。ではどのようにその最適時期と実施内容を決めていくかですが、まずはその住宅の状態を把握しなければなりません。

中古住宅の場合、自らが所有者となる以前の、新築されてからの状況は、前の持ち主(売主)だけが知るところです。この物件状態に関する情報がないままでは、安心して居住していくことが難しくなりますから、売買取引時にその情報を示すものとなる住宅の「修繕履歴」を提供してもらうことができます。

修繕履歴は、住宅について竣工されてから、年を経てどのような不具合が発生したか、それに対しどんな修繕・改修を行ったか、また日頃からのメンテナンスや補修はどのように行われてきたかを明らかにしたもので、引き渡し時点の劣化状況とともに、今後の修繕タイミングを見極める重要な資料になります。

中古住宅購入時には、この「修繕履歴」があるものを選ぶことが望ましく、それをもとに将来に向けた維持管理を考えていくことがおすすめです。設備の中で最も寿命が短く、手を入れる必要性が高いのは水回りです。とくに給湯器や配水管の痛みは生活に深刻な影響を与えますから、早めに対処すべきポイントです。新しくしたときから約10年を目安に、修繕の必要があると見込んでおきましょう。

緊急性が高く、また痛みやすい箇所としては、外壁と屋根も代表的です。常に雨風と外気にさらされているほか、災害などでも急速に性能が落ち、割れや腐食を起こすものとなりますから、雨漏りなどが発生する前に、10年弱でメンテナンスを、20年程度経てば大規模な修繕や塗り替えが必要になると考えておいてください。

内装のクロスやフローリングの張り替えなどは、日々の使用に伴う劣化で必要が生じてくるものですから、個々に事情が異なりますが、20年程度では全面的な改修の必要性が出てくると考えられます。

このほか、ライフスタイルの変化に伴って、バリアフリー化のリフォームが必要となったり、間取りを変更したりすることが、快適な生活を支える上で必要になる可能性があるでしょう。居住する家族の年齢などからおよそのライフステージを描き、資金計画に含めておくと安心です。

計画を立てる上で、意識しておきたいのが各設備・部位の修繕周期です。10年、15年、20年といったおよその目安を知っておきましょう。外壁や屋根など、足場を組む必要のある大規模工事は、まとまった費用も必要になりますから、その際に他のメンテナンス工事もあわせて行った方が、無駄なコストを抑えられるようになります。周期が近いものとの組み合わせ実施を賢く検討することが節約にもなるでしょう。

新築よりも維持費がかかる?

中古住宅の場合、購入価額が抑えられる一方で、新築よりも修繕費用がかさむともいわれます。しかし、新築住宅であってもメンテナンスが必要であることに変わりはなく、適切なタイミングで、賢く手を入れていけば、中古住宅でもリーズナブルに永く住まうことは十分に可能です。

フルリノベーションが実施された住機能の高い中古住宅などでは、新築住宅と遜色のない状態からの修繕計画となりますし、リフォームを近々行う必要がある中古住宅でも、きちんと計画を立てて維持管理を行っていけば、適切なメンテナンスが行われず計画性のないまま放置されて、緊急的に大規模工事を実施した新築住宅と比べ、長い目でみると、維持費の観点からもリーズナブルに抑えられていたということは、しばしばあります。

いずれにしても大切なのは計画性であり、緊急性や快適性などを加味した維持管理計画のもと、効率よく確実に修繕・補修を行っていくことです。資金についても計画を立て、毎月1~2万円を積み立てていくなど、コツコツ準備していくことをおすすめします。

維持管理が高い水準でできていれば、日々の生活が快適になることはもちろん、将来売却することになっても、資産価値の低下を小さく抑えられます。近年は建築技術や住宅設備・部材の進化、メンテナンス技術の向上により、こまめな手入れでかなりの経年劣化を抑えられるようになっています。購入時からしっかりと計画を立て、長期的なスパンで理想の住まいを確保・維持していくようにしましょう。

(画像は写真素材 足成より)