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2017.12.10

自治体紹介で安心!皆に嬉しい「空き家バンク制度」

空き家問題解消と地方創生へ、住宅購入希望者とオーナーをマッチング

近年、空き家となっている中古住宅の増加は、日本全国多くの地域で深刻度を増す社会的な問題となっています。中には所有者が分からなくなったり、適切な手入れがなされないために周辺環境にも安全面や防災面で悪影響を及ぼす可能性が出てきているものもあったりと、早急に対応が必要なケースもあります。

そうした中、こうした空き家を資産として再び活用し、新たな住まいを求めている人とのマッチングを図っていこうとする取り組みが進んでいます。今回は、自治体が関係するその代表的な試みである「空き家バンク制度」について、解説しましょう。

「空き家バンク」は、主に各地域の地方自治体や自治体から正式に委託を受けた団体によって運営されるもので、未利用となっている中古住宅を所有するオーナーと、それを住まいとして再活用したい希望者とをマッチングし、物件の情報を提供していく仕組みです。

制度そのものの歴史は20年以上と、すでにある程度の長さをもつようになっていますが、全国的に導入・運用が進み、注目されるようになったのは最近のことです。2017年に国土交通省が実施した「地方自治体の空き家対策等に関する調査」の結果によると、全自治体の約4割にあたる763自治体が、すでに「空き家バンク」を設置、さらに約2割の276自治体が導入を準備中か、設置予定があると回答しており、これをみれば、いかに取り組みが広く浸透してきているかが分かりますね。

「空き家バンク」制度では、これを設置・運営する自治体が、売却や賃貸借、マイホーム借上げ制度の利用を希望する空き家所有オーナーに物件情報の登録を募ります。またその地域における住まいの購入や賃借を希望し、物件を探している人には、利用者登録を促します。

そして、仲介を希望する宅地建物取引業者など協力事業者にも事業者登録を行ってもらい、自治体が「空き家バンク」を窓口にこの三者の橋渡し役を担って、それぞれに必要情報を提供、円滑な取引の成立を促進させることを目指すのです。

かたちとしては、不動産会社が運営し、売主・買主、貸主・借り手をつないで情報提供を行う、取扱物件の掲載サイトなどと似た働きをするものになりますが、不動産会社が運営する場合、仲介手数料を得ることが目的となっているのに対し、空き家バンクはそうした営利が目的となるものではありません。目的はあくまでも未利用・低利用不動産の活用と地域への定住促進、地域活性という社会的なものになります。

意外な発掘物件も!移住先探しでも安心!

空き家となっている物件は、その情報が広く開示されていないケースも多く、実際には価値があり、潜在的な利用ニーズがある物件でも、希望者のもとに情報として届かないことがしばしばでした。情報が届きにくい要因としては、所有者がさまざまな事情から有効活用に踏み出しにくいことや、物件価格が安価で手数料もごく少ないものとなるため、仲介する不動産業者が積極的に動かない傾向があることなどがあります。

こうした状況に対し、「空き家バンク」ならば、所有者が物件登録にあたって補助金を取得することができるケースもあるため売却や貸出に前向きとなりやすいほか、定住人口やそれに伴う税収の確保と空き家問題の解消を図りたい自治体は積極的に情報発信を行います。そのため、これまで民間の不動産会社からは見つけにくかった物件情報も見つけやすくなり、利用検討者にとっては掘り出し物の物件に出会える可能性も高い環境となっているのです。

また、田舎暮らしなど新たな土地に移住して生活する先の住まいとして探す場合、地域の生活情報など知っておきたいことも多くなりますが、これらについて、管理する自治体職員が丁寧に応対し答えてくれるというメリットもあります。地元の人々からの理解を得やすくなる点や、マッチングを自治体が行うという点の安心感も大きなポイントでしょう。

さらに、こうした「空き家バンク」は、これまで各自治体でバラバラに運営・情報提供がなされており、それぞれのページにアクセスして比較しなければならないなど、物件探しにおいてやや不便な点もありましたが、2017年10月末からは、国土交通省によって情報窓口の一元化が図られ、まとめて検索できる専用サイトも開設されました。

自治体ごとで異なっていた開示情報内容の項目統一化も進んで、全国どこからでも、希望者が簡単に情報を検索し、取得できる仕組みの整備がスタートしたのです。現在「全国版空き家・空き地バンク」として、2事業者によるテスト運用が開始されており、国土交通省のホームページからも閲覧することができます。

今後は、さらに未参加の自治体への参加働きかけや検索機能の向上、掲載物件数および情報の充実化を進め、本格運用開始へとつなげていく方針とされていますから、より活用しやすいものとなっていくでしょう。

「空き家バンク」により、空き家として眠っている中古住宅の利活用が進めば、多様化する消費者のニーズを満たす住まいの選択肢の増加はもちろん、中古住宅の有効活用、地域の活性化、地方創生などにつながっていくと期待されます。今後の展開に注目したいですね。

(画像は写真素材 足成より)