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2017.11.14

注目の「住宅ファイル制度」、導入メリットは?

中古住宅を専門家の目で多面的にチェック!

近年、立地条件などに優れた物件をリーズナブルに取得する方法として、中古住宅の購入を検討する方は増えてきています。しかし一方で、中古住宅の売買では、新築と異なり、その住宅物件の履歴や現状など、必要な情報が不足しがちであることが、流通促進を妨げる大きな要因になっています。

住宅の売買は、多くの人々にとって人生の中でもそう回数を経験することがない高額が動く大きな節目、大きな買い物となりますから、取引に際しさまざまな不安が生じるのも当然です。情報が不足しがちとなれば、なお不安は増すでしょう。これを解消するべく設けられたのが「住宅ファイル制度」です。

「住宅ファイル制度」は、中古住宅について、築年数など簡単で見えやすい情報だけでなく、個々細やかな部分まで、信頼のおける住宅のプロフェッショナルが、公正かつ多面的に評価し、その中古住宅の“プロフィール”を作成、情報をオープンにする仕組みです。

作成されるプロフィールは「住宅ファイル報告書」と呼ばれるもので、宅地建物取引士による物件調査書と重要事項説明書、インスペクターによる建物診断、防蟻業者の白蟻点検、これらの総合結果をもとにまとめた不動産鑑定士による住宅価格調査がひとつのセットになっています。

誰にどんなメリットがある?

この「住宅ファイル制度」ですが、利用するには費用も必要です。当然、それに見合うメリットがなければ誰も活用しようとしないでしょう。では、利用によってどんなメリットが生じるのでしょうか。

まず購入を検討する買主にメリットがあることは容易に想像されます。見た目は綺麗だし、築年数も問題ないと思えるけれど、これまでの維持管理状態が分からないから不安、品質は本当に安心といえるのか、住み始めてから大きなトラブルが生じたりしないだろうか、購入する場合、こうした中古住宅ならではの不安が生じがちです。

しかし「住宅ファイル制度」で「住宅ファイル報告書」を入手すれば、素人の目からは分からない建物の本当の品質や修繕履歴、改修必要性など詳細情報をまとめて知ることができます。購入検討時には、非常に役立つ資料となるでしょう。維持管理の度合いや今後の耐用年数について目安が得られ、コストパフォーマンスについても考えやすくなります。

もちろん、この制度を用いなくとも、購入時に重要事項説明書で物件に関する説明は受けられます。権利関係や住宅としての基本機能における重大な瑕疵の有無、生活インフラなどについてはこれで知ることができますが、あくまで最低限の情報を伝えるものであることから、買主にとって本当に知りたい情報がすべてカバーされているかというと、そうでない場合も多いのです。「住宅ファイル制度」の情報は、さらに詳細でこのニーズを満たすものとなり得ます。

また、不動産鑑定士の評価がついているため、金融機関からも建物価格に対する適切な評価が得られやすく、住宅ローンを組む際の書類として利用できるというメリットがあります。税法上の法定耐用年数よりも長い融資期間を設定可能になり、資金調達がしやすくなったり、住み始めた後に発見された瑕疵をカバーする瑕疵保険に加入することが可能になったりといった利点もあり、買主にとっては、より有利な条件で、かつ安心して物件を購入できる環境が確保できる制度となっているのです。

買主だけではありません。実は売主にとっても大きなメリットがあります。従来なら築年数が古いというだけで敬遠されたり、不当に低い価格がつけられたりしてきたケースも多くありました。十分な管理と修繕が行われ、高い質が維持されていても、築20年を過ぎるとほぼ無価値のように扱われるなど、こんな価格をつけられるなら売りたくないと思われることも多かったのです。

しかし「住宅ファイル制度」ならば、価値が多面的に評価され、基礎・躯体などの耐用年数やその物件ならではの付加価値もきちんと情報として提供され、価格にも反映されるようになります。ここで評価された額を目安に、売出価格や最終取引価格を設定したり、確認したりすれば、適正価格で売却できるでしょう。大切な資産である物件の本当の良さを伝えられ、納得の価格で譲ることが可能になります。

このように「住宅ファイル制度」を活用すれば、個々の中古物件について、詳細な情報とその価値が高い透明度をもって示され、オープンになることで、買主にも売主にもメリットがもたらされ、適正で安全な取引が活性化すると考えられるのです。

市場が活性化すれば、社会的にも空き家問題の解消や都市空間の再構築をはじめとする全般的な環境改善、経済の成長といった良い影響が及ぶと見込まれます。多くのメリットを多方面に生むこの制度が、今後知名度を上げ、積極的に利用されていくことが望まれるでしょう。

(画像は写真素材 足成より)