住宅ファイル制度>住宅ファイル制度コラム>活用が始まっている「住宅ファイル制度」って何?
2017.11.14

活用が始まっている「住宅ファイル制度」って何?

知らなきゃ損!注目の「住宅ファイル制度」

皆さんは「住宅ファイル制度」というものをご存じでしょうか。不動産業界との関わりや地域差などによっても異なるかと思われますが、多くの方にとってまだ耳慣れない制度なのではないかと思います。

最近、ニュースなどで取り上げられることも多くなった“中古住宅の流通促進”を実現するために設けられた方策のひとつで、既存住宅(中古住宅)を売りたいと考えている人、購入したいと考えている人、それぞれに大きなメリットがある仕組みですので、今回はこの制度の概要を解説していきます。

「住宅ファイル制度」は、近畿各府県の宅地建物取引業協会や不動産鑑定士協会など、関連団体が参加する近畿圏不動産流通活性化協議会が主体となって提唱しているもので、取引にあたり情報が不足しやすい中古住宅について、その品質や維持管理の状態、適正価格などを、それぞれの専門家が個々物件について現地調査を実施、その結果を統一フォームにとりまとめて示し、スムーズな売買の成立をサポートする仕組みのことをいいます。

昨今は、少子高齢化や晩婚・非婚化、核家族化などで、住まいをめぐる社会経済の構造も大きく変化してきています。ライフステージに応じた住み替えニーズや、よりリーズナブルに立地条件のよいオリジナルのマイホームを実現したいというニーズなどで、中古住宅の売買にも高い関心が集まるようになりました。

もともと海外に比べ、一種の“新築信仰”的な思考が強く、中古住宅がうまく活用できていなかった日本ですが、リノベーションやリフォームへの注目が集まるとともに、少しずつ中古住宅への心理的抵抗も軽減され、価値を見直す空気が生まれつつあります。

しかし、新築ならば保証される品質面が、中古住宅取引ではサポートされず、見た目には美しくても、安心・安全を支える住機能に深刻な欠陥があるかもしれない、どのように維持・管理されてきたか分からないといった不安が生じやすいほか、不動産取引特有の仕組みや複雑さも相まって、なかなか流通が活性化されない状態が続いてきました。

こうした流通の活性化を妨げている要因をカバーし、円滑な取引を支援して、それぞれにメリットがもたらされるようにしようと考え出されたのが「住宅ファイル制度」なのです。

見えにくい情報をオープンに!分かりやすく!

より具体的に説明しましょう。「住宅ファイル制度」では、売主からの依頼に基づき、建築士やリフォーム業者、防蟻業者、宅地建物取引士、不動産鑑定士など、不動産関連のプロフェッショナルが、それぞれの専門分野において、多角的かつ客観的に対象となる中古住宅の調査や評価を行います。

築年数や見た目では分からない建物としての品質を、インスペクション(建物診断)や白蟻点検などでチェックし、詳細な物件の情報をプロフィールとして明らかにします。住宅ローンのフラット35適合検査や、耐震診断などもオプションで付けることができます。

そして、通常の中古物件取引でも用いられる物件調査書や重要事項説明書に加え、これらのチェックで得られた詳細物件情報をもとに、不動産鑑定士が該当住宅の適正価格を算出するのです。価格報告の資料には、住宅の適正価格といえる調査価格のほか、経済的な残存耐用年数、躯体として期待できる残存耐用年数、物件の市場競争力なども記載されます。

いずれも築年数や構造などで画一的に評価される額や耐用年数ではなく、メンテナンス状況などが個々に反映されるため、購入する側も安心ですし、売主側も思いやこだわりのつまった住まいをきちんと評価してもらえるため、納得の価格で譲りやすくなるのです。

買主にとっては、購入検討時の不安を払拭する十分な資料となるだけでなく、報告書を作成するにあたり実施される調査が購入後に判明した瑕疵をカバーする瑕疵保険の加入に必要な検査も兼ねたものとなっているほか、これがあることでローンの担保融資につなげやすくなったり、金利優遇が受けられたりと、メリットが多くあります。必要なリフォームの見積書、長期修繕計画なども資料として添付されるため、長く有用な資料として利用もできます。

1件につき16万円程度の費用がかかりますが、安心・安全で納得のいく中古住宅取引を、さまざまな角度からサポートしてもらえるワンストップサービスとなっているため、十分に活用するだけの価値があるといえるでしょう。

各地で空き家問題も深刻化する中、良質な中古住宅が適正に評価され、次に求める人により活用されていく環境を整えることは、社会課題としても早急に取り組むべきところです。この「住宅ファイル制度」は、売り手と買い手の双方にメリットをもたらし、社会全体を幸福にする仕組みとして評価され、2017年度のグッドデザイン賞にも輝きました。今後はさらに知名度を上げ、利活用が進むことが期待されます。

(画像は写真素材 足成より)