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2017.10.30

安心を確保した売買のために!「瑕疵保険」を知ろう

既存住宅売買瑕疵保険って何?仕組みを解説

立地条件から予算まで、より理想的な住まいを取得するための方法として、近年は中古住宅への関心が高まっています。中古住宅の購入を検討する際、やはり気になるのはその品質と安全性でしょう。気になる物件はあるけれど、素人では気づかない欠陥があるかもといった不安を抱かれる方は少なくありません。

そこで、そうした不安を軽減し、さらに安心・安全が確保された中古物件の売買を支える仕組みとして、整備が進められている中から、今回は「瑕疵保険」についてご紹介しましょう。

そもそも「瑕疵」とは何か、あまり聞き慣れない言葉かもしれません。瑕疵とは、法律や当事者らが一般的に備わっていると想定する本来の機能や品質、性能、状態が欠けていること、何らかの欠陥があることをいいます。住宅ならば、住まいのとくに重要な構造における主要部分、暮らしを守る基礎的な耐力面などに大きな欠陥があることを意味し、瑕疵保険は、そうした欠陥をもった住宅を消費者があやまって購入させられることのないよう保護する保険なのです。

新築住宅の場合、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づき、「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」といった点で、住宅を供給する事業者や売主が、引き渡しから10年間、瑕疵が認められた場合に必要な補修を行ったり、損害を賠償したりする義務があるとされています。

万一、売主側が倒産するなど責任が果たされないことが懸念される事態が生じても、その義務の履行に支障をきたさないようにする「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」もあります。

しかし中古住宅の売買では、住宅が先の品確法対象とならず、瑕疵を担保する責任が、原則として個々の契約内容によるものとなっており、個人の売主ならば数カ月程度の短期間か、責任を免除する特約で取り引きされるのです。宅建業者が売主となる場合でも、宅建業法で定められた最低期間の2年間という限定的なものになることが一般的です。

こうした制度上の背景から、購入者が自身で追加補修を早々に行わなければならない事例も目につきやすくなり、中古物件は不安、品質に問題があるのではないか、というイメージが生まれたと考えられます。そしてこのマイナスイメージが中古住宅の流通活性化を妨げる大きな要因にもなってきたのです。

検査と保証をセットにして安心を確保!

そこで国は国土交通大臣が指定した専門の法人が取り扱うものとして、「既存住宅売買瑕疵保険」を導入、2010年から活用を促してきました。加入は義務ではなく、あくまでも任意ですが、加入していると購入した住宅に一定の瑕疵があった場合、その補修費用などを保険金でカバーしてもらえます。

「既存住宅売買瑕疵保険」は、安心して住むために求められる中古住宅の基本的な性能について、専門の建築士による検査で合格してはじめて加入できるもので、万一の場合の保証もセットされている保険制度です。保険には2種類あり、1つは「宅建業者販売タイプ」、もう1つは「個人間売買タイプ」です。それぞれをみていきましょう。

「宅建業者販売タイプ」は、中古住宅を取り扱う宅建業者が消費者向けに再販するにあたり加入するもので、売買ごとに保険を申し込み、検査を済ませて保険付き住宅として買主に引き渡します。保険期間は5年間または2年間、修補費用や調査費用、補修作業に伴って生じる仮住まいの費用などが保険金支払いの対象です。

加入者が売主の業者ですから、瑕疵担保責任を果たす上で生じる損害に保険金が支払われ、売主を通じて保証されるかたちになります。ただし業者が倒産している場合などは、買主による直接請求が可能です。

一方「個人間売買タイプ」は、売主が宅建業者以外の場合に用いられるもので、瑕疵をチェックする“検査機関”が保険に加入、保証を行うのが大きな特徴です。まず売主が検査機関に検査と保証を依頼し、検査機関が保険加入手続きを実施、保険を提供する法人や保証者となる検査機関が住宅の検査を行います。物件が引き渡しとなる前に、保険法人と検査機関の2段階でチェックが実行されることになりますね。こうして保険証券が無事が発行されれば、保険付きの住宅として買主に引き渡されます。

保険期間は5年間または1年間、保険金支払いの対象は「宅建業者販売タイプ」と同じです。売買後に瑕疵が見つかった場合、検査機関の保証責任について保険金が支払われ、買主は検査機関を通じて保証されます。宅建業者のケースと同様、検査機関が倒産している場合などでは、買主による直接請求で支払いが受けられます。なお、売主からではなく、買主から検査と保証を依頼することも可能となっています。

中古住宅の品質は、プロでなければ見極められないケースも多く、やはりこうした瑕疵保険の仕組みなどで安心・安全を確保することが望ましいでしょう。仕組みや環境の整備が整うことで、誰もが理想の住まいを手にしやすい社会、多くの売買選択肢を安定的に手にできるようになることが期待されます。

(画像は写真素材 足成より)