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2018.1.25

国の優良中古ブランド「安心R住宅」って本当に安全?

中古住宅購入時の不安を軽減する「安心R住宅」とは

海外に比べても、新築偏重の住宅・不動産市場となっており、根強い“新築信仰”から、かなり短いスパンで作っては壊すスタイルが当然となっている日本ですが、近年になってようやく、そうした状態を見直し、中古物件の流通促進を図ろうという取り組みが本格的に進められるようになりました。

そうした中、国土交通省では、一定の基準を満たした優良中古住宅を「安心R住宅」としてブランディング、従来のマイナスイメージを払拭していくとしています。価値ある住宅を安心してよりお得に購入できる環境、適正な中古流通市場が構築されていくことは、広く私たち国民にとって望ましいことですが、やはり本当に安心・安全といえるのかが気になるところでしょう。そこで今回は「安心R住宅」における安全性について、少し詳しくみていきます。

中古不動産の場合、新築物件に比べて、品質や取引における「不安」、安価である分「古くて汚そう」、情報が少なく「分かりにくい」といったマイナスイメージがあることが知られています。良い立地に手頃な価格で物件が見つかっても、現状では、こうしたイメージから購入を躊躇するという人が少なくないのです。

そこで、これらのマイナスイメージとして挙がるキーワードごとに対応と満たすべき品質基準を設け、国が関与することでいわばお墨付きブランドの中古住宅として販売できるようにした仕組みが「安心R住宅」制度です。名称内の「R」は、Reuse、Reform、Renovationの3つの頭文字を表しています。

現在の予定では、ルールの設定や不動産会社の審査・指導・監督を行い、「安心R住宅」認定マークの使用許可を出す一般社団法人などの事業者団体を国が認可し、制度の運用をその団体に委任して進めていく方針で、2018年4月にはマークを付した中古不動産の流通が開始されることとなっています。

「安心R住宅」はどこまで安心・安全?

「安心R住宅」が本当に安心・安全かどうかは、まず満たすべきとされている要件がどのようなものか理解しなくては、判断のしようがありません。ですから、以下で主な安全性に関するポイントをチェックしましょう。

まず「不安」払拭のため、1980年6月1日以降に建築され新耐震基準に適合しているか、またはそれ以前の建築でも耐震診断で安全性が確認され、これに準ずると認められることが条件となり、基礎的な耐震性が確保されています。

またインスペクション(建物状況調査など)が行われていて、構造上の不具合や雨漏りがなく、住機能に深刻な欠陥がないとして既存住宅売買瑕疵保険契約を締結するための検査基準にも適合していることが求められるため、希望すれば同保険に入ることができる状態が保証されます。

そして不足する情報を補い、「分からない」不安をなくすため、その物件が新築時に適法だったか、長期優良住宅などの認定は受けていたか、住宅性能評価や設計図書関連情報はどうかといった各種データ、過去の維持管理履歴データとして維持管理計画の有無や給排水管など設備の点検・診断履歴、防蟻、修繕、リフォーム・改修などの実施状況の開示をきちんと行うことが求められています。

ほかに、構造上の不具合や雨漏りに対する保険・保証、その他給排水管や住宅設備、リフォーム工事にかかる保険・保証、シロアリ関連の情報について、有無を示すようにもなっており、その物件がどのように扱われてきたどんなものであるか、見えないところまで理解しやすいようになっているのです。

さらに、認定する事業者団体がトラブルの相談窓口を設置することから、予期せぬ困り事が生じた際、スムーズに連絡を取れる先があるというアフターフォローの安心感もあります。

なお、物件がマンションなどの共同住宅の場合は、管理規約や修繕積立金の積立状況、大規模修繕計画、共用部分の修繕履歴に関する情報なども、あわせて提供されることになっています。

判断のポイントは?

基礎的な品質の保証やこれまでの点検・修繕状況など詳しい情報が開示されること、どんな保険や保証が付くか分かること、相談できる窓口があることといった点で、「安心R住宅」が購入者に与えてくれる安全性の担保や安心感は一定以上のものがあるといえます。

一方で、従来の仕組みや制度を組み合わせ、個々安心材料となる情報を収集して積み上げていけば、「安心R住宅」でなくとも、同水準またはそれ以上の安全性をもった中古不動産を購入することもできるでしょう。

開示情報として、各項目の「有」「無」「不明」は示されますが、どの程度からを“安全”と判断するかは、個人の捉え方にもよります。

売主から必要な情報をできる限り引き継ぎ、安全な住まいの確保につなげていくサポートになること、基礎的なチェックや情報収集を一括して行えるものとなっていることといった点で、便利な制度となっていることは間違いありませんが、あくまで「安心R住宅」認定もひとつの目安、ブランド名に過ぎないのであって、絶対に安心・安全と言い切れるものではありません。

制度としてうまく活用しながら、ひとつひとつ丁寧に確認し、納得のいくまで情報を収集すること、疑問点を放置することなく解決させて検討や契約を進めていくことが何より重要です。

(画像は写真素材 足成より)